私の競馬はチョット新しい

-第56回-
中央競馬騎手菱田裕二さん


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留年の悔しさも糧に関西新人賞を獲得

市丸:その厳しさの部分になりますが、まず入学試験から16倍という難関だったと聞いています。手応えはいかがでしたか。

菱田:手応えではないですけれど、1次試験、2次試験とも「ここに集まっている中で、ジョッキーになりたいという気持ちを一番強く持っているのは自分だろう」と思っていました。どうしようもなくジョッキーになりたかったですし、気持ちは絶対に負けていないという、変な自信だけはありましたね。

市丸:その難関を突破して合格されましたが、競馬学校では1回留年をされているそうですね。これはケガをされたのですか?

菱田:いえ、ケガではなく「精神項目」という部分で、恐怖心やプレッシャーに打ち勝つ力が弱いと、1年生をもう1度やるように言われました。ただ、その年は同期が4人退学していて、自分も退学なのかと思ったら、ぎりぎり留年ということで残してもらえました。

市丸:厳しいですね。その留年したことがプラスになった部分は……。

菱田:基礎乗馬からもう一度しっかり学ぶことができました。また、ただただ悔しい1年間でしたから、そういう意味でも大きかったです。今も大した成績ではありませんけれど、この留年がなかったら今の技術もないと思います。


市丸:それによって、昨年新人最多勝を争った中井裕二騎手と同期になりました。我々は菱田さんと中井さんが1、2着になると「ダブル裕二」などと言っていますが、競馬学校時代にそのあたりで意識されたことはありましたか?

菱田:特に名前で意識することはなかったですが、卒業して同期の栗東所属が二人になりましたから、そのときには負けたくない気持ちはありました。

市丸:中井騎手とは、1年目は同じ23勝でした。新人賞は菱田さんが取られましたけれど、勝ち星が並んでいると「勝った」という感じではなかったですか。

菱田:まったく思いませんでした。また、いつも同じ競馬場ではなく、この夏にしても北海道(菱田騎手)と小倉(中井騎手)に分かれていましたから、あまり意識せず乗っていますね。それに、上のジョッキーもたくさんいらっしゃいますので、そこに食らいついていきたいという気持ちが大きいです。

市丸:若手のジョッキーでも、先日は浜中騎手と川田騎手が、岩田騎手と同日に年間100勝を達成されました。

菱田:年齢がさほど離れているわけではない、近い先輩が活躍されていることは、自分にとってたいへん刺激になります。

市丸:さきほど夏競馬の話題が出ましたけれど、菱田さんは2年続けて北海道で騎乗されています。

菱田:函館は競馬場も好きですけれど、街の雰囲気も良いですし、ご飯がおいしいですね(笑)。

市丸:今年の函館は連続開催の後半になって雨が多く、芝コースは非常に重い馬場になりましたね。

菱田:ああいった馬場で騎乗したことはなかったので、びっくりしましたけれど、良い経験になりました。

▼ジョッキーならではのJRA-VAN活用法とは?

市丸:今年の函館はかなり特殊な例になりますけれど、そういった馬場状態による脚質の傾向なども、JRA-VANで調べられることはありますか?

菱田:レース映像も見ますし、データでも傾向を確認しています。そうやって見ていると、自分の感覚だけを信じてしまうのも良くないのかな、と思いますね。

市丸:感覚よりも、データのほうが正しい場合もあるということですか。

菱田:そう思っています。乗っていて「そろそろ外差しが届くのかな」と思っても、実際に結果を見ると前の馬が多く残っていることもありますから、自分の感覚にはとらわれずにデータや結果を見るようにしています。

市丸:そういった傾向と、メンバーや自身の騎乗馬を考えて、ゆっくり行っても差しきれるかな、とか、前へ行ったほうが良さそうだ、とか、そういったあたりも……。

菱田:そのあたりはすごく考えて乗っています。