-第37回-
ノーザンファームしがらき場長松本康宏さん
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スタッフの前向きな気持ちを大切に
市丸:今はどのくらいのスタッフがおられるのでしょうか。
松本:ひと厩舎7人で8厩舎、さらに事務所スタッフ、獣医師、装蹄師など合わせると60人以上のスタッフがいることになります。
市丸:どのように集められたのでしょう?
松本:基本的には、ノーザンファームの各牧場から、希望者を募りました。さらに、新規で採用したスタッフも居ますし、期間限定の研修という形でしがらきに来るスタッフも何人か居ます。中には1年目、2年目という人もいたのですが、調教主任や厩舎長などが中心となって、若手を育てていってくれました。今では、研修で来ている人の中に、ずっとこちらに残りたいと言ってくれる人もでてきましたね。
市丸:以前、ノーザンファームを取材させていただいたときにも感じましたが、一番大切なのは人である、というお考えですね。
松本:そうですね。それに尽きると思います。基本的には厩舎長に任せてあまり口出しせず、あまりうまく行ってなさそうなときにはサジェスチョンをして、「自分たちでやっている」という感覚を持ってもらうようにしています。また、自分の下についている獣医師にも、全部自分が指示するのではなく、ある程度の責任を持たせながら、前向きにやってもらえるように心がけています。そうしないと、いつまでも自分が楽をできないので(笑)。人を育てるには任せてやっていくしかないですし、最初オープンしたときが4厩舎で、あっという間に8厩舎になって、それを全部一人で見るなんて、超人ではないので不可能ですよね。

レントゲン写真は、すべて馬別にデータベース化されて残っている。
したがって、何か脚元に問題が起きたときもすぐに過去の写真と対比させることができる。
市丸:そんな中、こちらでトレーニングを積んだ馬から、三冠馬・オルフェーヴルが誕生しました。
松本:オルフェーヴルも、ここで「鍛えた」というのは、少しニュアンスが違うかもしれません。しがらきでしっかりと調教していたことには間違いありませんが。。。
市丸:やはり、リフレッシュされることが重点でしたか。
松本:そうですね。オルフェーヴルもそうですが、ほとんどの馬は15-15をまっすぐ走らせることはしますが、目一杯に調教することはほとんどないと思います。それで、もたれるとかしっかり走れないというのがあれば乗り手が修正し、どこか痛いところがあるのであれば獣医が診て治療する、それだけですね。
市丸:もたれるクセというのは、馬券を買う立場からすると、なかなか治らないのではないかと思ってしまうのですが……。
松本:そんなことはないと思いますよ。たとえば、どちらかの腰が痛くて踏ん張れないために一方だけで走ろうとするとか、片方の歯が痛いからハミを抜こうとして逃げてしまうとか。
市丸:そういった原因を見つけて、修正していくわけですね。
松本:パトロールフィルムなどを見ても、まっすぐ走った方が有利ですから(笑)。
市丸:もうひとつ馬券を買う側の話で申し訳ないのですが(笑)、こちらでトレーニングを積み、栗東に入厩して10日や2週間くらいでレースに出走する馬も見られます。ファンからすると、こちらでどれくらい調教を積んできたのかわからないのですが、こちらの時計などはデータとして持たれているのですか?
松本:調教時計については馬ごとにデータベース化しています。理想を言えば、トレセンでの時計と、こちらで出した時計をまとめてデータベースにできるといいのですが、それはこれからの課題でしょうか。
このように毎日、馬場状態をチェックして、何か問題があるときは対応策を考える。
市丸:ほかに、どのようなデータを持たれているのでしょう?
松本:個人的に、表計算のファイルに血液検査の結果を入れて管理しています。調子の良し悪しではないですけれど、ざっと見たときに基準の値に比べてどうか、と。馬場の状態によって、筋肉への負担が大きかったり、関節や靭帯への負担が大きかったりと変化するんですよね。同じように乗っているつもりでも、その馬にとっては意外ときつかったりとか。そういうのをいち早く察知するために、血液検査の結果や、乗っている人の感覚や、実際に馬場を触った感触などを併せて考えるようにしています。一方だけを見ていると、間違ったときに大変なことになってしまいますから。