私の競馬はチョット新しい

-第09回-
中央競馬調教師 矢作芳人さん


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人がやめるような厩舎にだけはしたくなかった

市丸: それでは、よろしくお願いします。こちらの本(「開成調教師」白夜書房刊)を読ませていただいて大変感銘を受けました。わたしのような小さな会社を経営している人向けのことも書かれていて……。

矢作: ここ1年、この本を読んでいただいて感銘を受けたとか、考え方に同意できるからと、馬を預けてくださったオーナーが何人かいらっしゃって、すごくうれしかったですね。先輩調教師に読まれると、ちょっと恥ずかしいところもありますが(笑)。


市丸: 本を出されたあとJRA最速で100勝を達成され、2年連続優秀調教師賞を受賞。今年も現在(9月上旬)リーディング5位と好成績を挙げられています。トレセンでの本の評判も高いのではないですか?

矢作: いやいや、全然そんなことはないですよ。ただ最近、若手調教師には少しまねされているのかな? と思うときもあります。気のせいかもしれませんけど(笑)。

市丸: 僕みたいな素人でも、読んでいてまねしたくなるものがたくさんあるように思います。特に、1円でも多く稼げという信念。できることはすべてやるんだという。

矢作: それは開業当初からあります。まだまだですけど。スタッフや、牧場の方とか、周囲を取り巻く方も含めてみな同じベクトルを向いてやっているという感じがあって、それが良い方向に向かっているとは思います。

市丸: 人をどう使うか、というのは一番難しい部分かと思うのですが、これまで一人もお辞めになっていないというのはすごいですね。

矢作: その点くらいじゃないですか。もし他人より秀でている部分があるとすれば。人が辞めるような厩舎にだけはしたくなかったので。人と一緒にやっていくんだ、ということに関しては、周囲からうらやましがられるような関係はできている、それだけは自信を持って言えます。

市丸: 今年の感じでいきますと、リーディングも狙えるのではないでしょうか? 今のところ6勝の差ですが、関西では。

矢作: いやあ、音無先生(関西1位)は駒持ってらっしゃるから(笑)。まだまだ。

市丸: 今年3月から22馬房になったそうですが……。

矢作: あくまで臨時で、来年の2月には20に戻ってしまうんです。わたしがメリット制で馬房が増えるようになるのは早くて3年後か4年後なので、非常に厳しいです。

市丸: それは、開業から何年か経たないとというルールなのでしょうか。

矢作: そうですね。正直「頭数」で稼いでいる厩舎なので、厳しいです。逆に、新人は成績が悪くても5〜6年で20馬房にまではしますよ、というのがあるのですけれど。