私の競馬はチョット新しい

-第07回-
ノーザンファーム空港 調教主任 犬伏健太さん


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オウケンブルースリの菊花賞制覇は「我慢」していただいた成果

市丸: 馬に携わる方のお話しでは「我慢」という言葉を多く耳にしますけれど、馬を持っていたらどうしても早く使って欲しくなりそうですよね(笑)。そんな「我慢して良かった」という具体的な例はありますか?

犬伏: 最近ではオウケンブルースリです。最初は無理ができなかったのですけれど、「我慢すれば必ず走りますから」と。菊花賞(優勝)に結びついたのは、オーナーが我慢してくださったからだと思います。

市丸: そういった見極めのコツなどはあるのでしょうか。

犬伏: 経験がないとできないですね。最初に任されたころは、調教をやりすぎて失敗したこともあったと思います。今年の2歳世代は35頭ほどいますけれど、目標として「オーバーワークで故障させないようにする、でも調教はやろう」というのがありました。それで、まだこの段階(7月)ですけれど、どうにか手応えを感じ始めたところです。

市丸: そのあたりは獣医さんとの相談なども?

犬伏: 怪我や病気がある馬は、もちろんその都度看てもらっていますが、厩舎の馬を全頭、定期的に見てくれる日があって、そこで一緒に見て意見を出し合っています。人間の病気でもそうですけれど、病気なりケガなりを改善しようと思ったら、休むのが一番早いんです。でもアスリートを育てているのですから、トレーニングもしなければならないですよね。その妥協的というか、1頭1頭違う落としどころを探ることになります。

市丸: 最近は(トレセンの)厩舎に空きがないことも多いようですが、調教が進んでもう送り出したいのに入れられない、などということはないですか?

犬伏: どうしても入厩馬が「かぶる」時期がありますよね。昨年はある程度こちらで仕上げたかったのですが、結果として引っ張りすぎたこともありました。そろそろ入れたいなと思ったときには、(受け入れ側の厩舎で)ほかの馬がどんどんと……。もっと早くデビューさせてあげれば違ったかも、というのはありました。

市丸: それを受けて、今年はなにか変えたりしているのでしょうか。

犬伏: まだうまくいくかわかりませんが、早めに送っても大丈夫そうな馬なら、ある程度早い段階でトレセン近くの牧場へ送るようにしています。おなじ調教の進み具合なら、こちら(北海道)にいる馬よりも近くにいる馬を入れますからね。その第一号がダノンパッション(6月21日に新馬戦優勝)でした。



市丸: さきほど新人の練習を見るという話がありましたが、馬だけではなく人を育てるのも仕事になりますよね。

犬伏: そうですね。実はわたしあまり上手ではなくて(笑)。

市丸: 「背中を見て育て!」みたいな(笑)。

犬伏: 古いタイプですね(笑)。

市丸: 馬と同じで、やっぱりタイプに応じてということになりますか?

犬伏: その通りです。ただ、これはすごく悩みます。(個々の馬に)合う合わないとか、技術がともなっているか。また、わざと難しい馬に乗せたほうが育つタイプもいますし、逆に全然乗れないとしょげてやる気がなくなってきたり。場合によっては馬も人もケガをしてしまうこともありますから、それを避けつつ技術を上げていくのが大事ですね。